日本銀行はこのほど、地域経済報告(さくらレポート)の10月分を公表した。全国9地域の景気の総括判断は、北海道と中国の2地域で判断を引き下げた。地震や豪雨など自然災害が影響した。その他の7地域は判断を据え置いた。
前回(7月)の判断は北海道が「緩やかに回復している」、中国が「緩やかに拡大している」だった。それぞれ「基調としては緩やかに回復しているものの、北海道胆振東部地震の影響による下押し圧力がみられている」「平成30年7月豪雨によりダメージを受けたものの、社会インフラの復旧等に伴い、豪雨の影響が低減する中で、基調としては緩やかに拡大している」に判断を変えている。
近畿は台風の影響がみられるものの、「緩やかに拡大している」との判断を変えていない。
報告では各地の判断の背景として、「海外経済の着実な成長に伴い、輸出が増加基調にある中で、労働需給が着実に引き締まりを続け、個人消費が緩やかに増加するなど、所得から支出への前向きな循環が続いている」ことが挙げられるとしている。
観光に関わる各地の企業の主な声は次の通り。
「地震発生以降、国内客、インバウンド客ともにキャンセルが相次いでいる。観光客の多い時期であり、ダメージが大きい」(北海道、函館、宿泊)。
「インターンシップ制の導入後、参加した学生の職場環境等に対する理解が深まったため、新卒のエントリー数が増え採用が容易となったほか、ミスマッチも減って離職率が大幅に低下した」(東北、仙台、宿泊)。
「当地の温泉旅館等では、台風等に関連した予約キャンセルが一時的に発生した。また、関西国際空港の利用制限によるインバウンド客の減少もみられたが、空港の復旧に伴って従来の水準を回復している。この間、当地から北海道方面への旅行は、北海道胆振東部地震により低調に推移している」(北陸、金沢、旅行)。
「8月の客室稼働率は過去最高を更新した。もっとも、今後は相次ぐ自然災害の影響で訪日外国人客が落ち込まないか懸念している」(関東甲信越、横浜、ホテル)。
「相次ぐ自然災害による予約キャンセル等で稼働率は一時的に低下したものの、関西国際空港の旅客便再開以降は徐々に回復している。以前の勢いを取り戻すには、復旧状況の効果的な情報発信が鍵となるため、政府等の取り組みに期待している」(近畿、大阪、ホテル)。
「豪雨災害後、宴会や会議のキャンセルが相次いだが、ボランティアやマスコミの宿泊需要が旺盛なことから、客室稼働率は高水準を維持」(中国、岡山、宿泊)。
「西日本豪雨の影響により、被災地域のビジネスホテルを中心にマスコミ、保険会社社員等の宿泊特需が一時的にみられたものの、主要観光地では、被害がほとんどなかったにもかかわらずキャンセルが相次ぐ等、風評被害から宿泊客数は弱含んでいる」(四国、松山、宿泊)。
「『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』の世界文化遺産登録を受け、キリスト教徒の多いフィリピンからの宿泊者が増加している」(九州・沖縄、長崎、宿泊)。